●出席者
吉田幸一(神奈川県立七里ガ浜高等学校学校長、同窓会名誉会長)
小林直美(神奈川県立七里ガ浜高等学校PTA会長)
酒井康隆(神奈川県立七里ガ浜高等学校同窓会公式ホームページ管理人、5期生)=司会
●場所
2011年6月8日(水)、七高校長室にて
-- 「2011年新春鼎談~学校長、PTA会長と共に七高の未来を考える~」を同窓会HPに掲載しましたのが本年3月11日の午前でした。その際、近々後編の掲載をお約束していたわけですが、この5月から七高PTAの実行委員会は新年度となり、新会長として前年度副会長の小林直美さんが就かれました。
そこで新たに小林会長をお迎えして、2011年度が始まってから約2ヶ月たった本日、PART1の収録日からほぼ5ヶ月後ですが、鼎談のPART2を行います。なお小林会長はご長女が現在3年にご在学中です。
では吉田校長、小林会長、よろしくお願いします。
新年度がスタートして-50分授業、3学期制への変更、行事の様子、エアコン導入など
-- 新年度が始まってちょうど2ヶ月がたちました。春休み直前には東日本大震災発生という出来事がありましたが、七高にとってこの2011年度は3年間続いた90分授業から50分授業に、及び10年近く続いた2期制(前後期)から3学期制へそれぞれ戻した、という画期となる年度でもあります。
3学期制への変更については本来は1年間たってからでないと本当の評価というものは出来ませんが、特に50分授業について曜日によっては7コマある日もあるなどの変化についてのこの2ヶ月間の中でのご感想をお聞かせ下さい。
吉田 まだ2ヶ月ですので結論を出せる段階ではありませんが、90分から50分にした理由は生徒が集中力を保てる時間はおよそ60分以内だろうと。そして文部科学省が作成しているシラバス(授業計画)は50分をベースにして作られています。そこに合わせる事により、生徒も集中力を保持できるようになりました。教員においても90分授業はそれなりに成果はあったと認識していますが、授業面でさまざまな工夫をしなければなりません。英語や数学など反復学習が必要な教科では50分授業にすることで、週に何コマも繰り返しができますので、学習内容の定着状況も良くなっていると思います。
また授業の様子ですが、4月から授業を見に行っていますが、正直なところ去年は50分過ぎると机の上にうつ伏せになっているという状況もありました。生徒の授業に取組む姿勢にも問題はありましたが、やはり集中力が途切れて授業に関心を向けることが出来ない生徒も少なからずあったと思います。今年度はそういった生徒は殆どおりません。50分の中で集中的に授業展開されることで、生徒も一層授業に真剣に取組む姿勢を もって臨んでくれていると思います。
-- 早速定期テスト1回目の1学期中間が5月下旬にありました。生徒達はテストの回数が増えることについては必ずしも歓迎ではないでしょうが、先生方にとっては評価の機会が増えるということで、より今後の指導の上で役立てられているかと思います。
吉田 やはり夏休み前にきちっと成績を出して、苦手な教科については自助努力し、得意な科目について更に伸ばしてもらう、そういった振り返りが出来るというシステムが大事です。
-- 会長さんは3年生のお嬢様から、1,2年次の90分授業から本年度50分になったことについて、何か感想などご家庭でお聞きになっておられますか?
小林 そうですね、志望校決定に際して「90分授業って面白そうだね」というのが七高を選んだ一番の決め手だったのですが、いざ入学して受けてみると先程の校長先生のお話のように途中から疲れてしまう、外を眺めたりして先生のお話もうつらうつらとしか聞いていないと。家では「それは言い訳にしかならないんだよ」と叱ったこともありましたが、50分になってやはり楽になったと言っています。
ちょうど今、今月の運動会の衣装長の仕事が大変で、睡眠不足もあり先生方には大変申し訳ない状況なのですが、本年度の授業が始まった当初は何かすっきりした、と。授業内容はやはり3年ですので難しいけれど、聞いていて余裕が出来た、と娘は言っておりました。
-- 1日に7コマある曜日が月・木と週2回あります。これはこれまでの七高ではなかった授業編成ですが、この1日7コマというのが生徒達にとって負担になることはないのでしょうか?
吉田 大変は大変かと思いますが、いわゆる七高と同レベル以上の高校では結構行っています。やはり50分6コマですと週5日で30単位しか取れませんので、大学進学率の高い高校で30単位というところは無く、32~3単位が一般的です。カリキュラム上色々な工夫をして、生徒が出来るだけ自分の進路実現を果たせるようにする必要があります。また、生徒も限られた時間を有効活用し、集中して物事に取組む態度を醸成する良い機会となると考えています。
-- 本年度の新入生の36期生については、たまたまでしょうが七高の歴史上珍しく男子の方が女子より多くなっています(36年間で5回目)。それはともかくとして新入生全体を見てのご感想を今後の期待も含めてお願いします。
吉田 何事も自主的に取組める生徒が多く集まっています。これは男女問わずです。中学の時にある意味成績も良くて、そして部活動や生徒会活動、クラス委員などリーダー的な存在だった生徒が多く集まったといえます。
七高の魅力は海が間近にあるという環境の良さ、行事や部活動が盛んだという点に加えて、やはり自分の進路実現が出来るという、そういった点を踏まえて3年間きちんとやっていこうという意思を持って入学してきた生徒たちだと思います。それはやはり授業態度に反映されていて、真剣に授業に取組んでいます。
また私が生徒たちと色々な話をしますが、「七高での学校生活はどう?」と質問した 時に返ってくる言葉は単に「楽しい」とか「面白い」というだけではありません。「授業の内容がよくわかる」ですとか「先生方が丁寧に教えてくれる」とか、部活動についても「先輩が優しい」とか「色々細かいことを配慮してくれる」とか、語彙(ボキャブラリー)が豊富で、感受性が高い生徒が多く見受けられます。こういった点からも目的意識の高さがうかがわれます。
-- 単にYes/Noだけで答えるのではなく、そこに自分なりの言葉で感想や意見を付け加えることが出来るわけですね。ケータイ世代の今の若者は語彙力の低下が言われていますが、七高生においてはそのようなことが無いとすれば、大変嬉しいことです。
そうしますと今年の新入生が今後2年生、3年生となった時に、生徒会活動などを通じてまた更に七高を良く変えていってくれる原動力となることが期待されます。
吉田 今の2,3年生もそういった後輩たちが入ってきたわけですから、先輩として頑張らなければいけないという自覚を持って接していって欲しいと思います。と同時にそういった意識を持つことが出来るのも七高生であると信じています。先輩は先輩の役割を、後輩は後輩の役割をきちんと担うといった、全学年が相乗的に良好な役割を果たしてくれることを期待したいです。
-- 会長さんは、今年の新入生との接点などはございますか?
小林 知人の息子さんが新入生におりまして現在サッカー部で頑張っていますが、校長先生が言われたように先輩方がとても思いやりがあるそうで、「七高に入って良かった」と言っているようです。
-- 他の新入生からもその言葉がたくさん聞けることと思います。
新入生に対する本年度初めての試みとして1日目は外部の会場(県立かながわ女性センター=江ノ島)を用いるなどして新入生オリエンテーションが4月上旬に2日間にわたり開催されましたが、これにつきましては校長先生の狙いは達成されましたでしょうか?
吉田 やはり高校の授業の受け方とか、家庭学習の方法とか、そういうものをオリエンテーションのなかできちんと行う必要があると思います。高校の授業はより専門的で深くなっていきますので、中学で成績の良かった生徒でも少し油断するとすぐ判らなくなってしまうということがあります。そういった時にどう対処すべきかといったことを入学直後に教えられたことは、教員・生徒双方にとって良い機会だったと思います。
さらに3月15日の合格者説明会の際に課題=5教科についての予習と「七高で何をやりたいか」という作文、を出しています。「お兄ちゃん/お姉ちゃんの時はこんな課題はなかった」と言っていた新入生も実際にいましたが(笑)、入学式までの約半月の間に中学校のおさらいと高校での目的意識を高めることができたという点で、新入生にとって大変良かったと思っています。
-- では来年度以降も、よりバージョンアップされながら続けていかれるということですね。あと本年度すでに行われた全校的な行事としては5月の球技大会がありましたが、いかがでしたか?
吉田 来年度以降も新入生オリエンテーションは続けていきます。
球技大会は残念ながら今回は降雨のため、体育館で3種目開催されました。私も勿論観戦しました。生徒たちのあのエネルギーは凄かったです。七高生の行事に対する意欲・熱意は 相当なものがあります。
小林 確かに凄かったです。そういうのは社会に出ても充分役立ちます。というのはリーダーシップを取ったことの無い人は威張って他人をあごで使いがちになりますが、イベントに力を入れた経験のある人は皆で揃って一歩前へまた一歩前へ出て、というような進め方を知っているのが大きいです。
-- 1週間後の6月15日には、七高3大行事の一つである運動会が開催されます。先程小林会長のお嬢様のお話でも出ましたが、現在生徒達はその準備のことでまさに頭がいっぱいの時期かと思います。校長先生から見て運動会に対する生徒達の取組みようはいかがですか?
吉田 とにかく晴れた日は朝から熱心に練習しています。夕方は19時30分には完全下校するということは今のところきちんと守られています。
ただ昨年度の反省として、パフォーマンスの一環として髪の毛を染める、それから 服装も普段と違ったものにする、そういったことが運動会終了後も続いてしまうとけじめがまったくつかなくなってしまいます。やはり集中すること、けじめをつけることを生徒が会得して欲しいと思います。今年はそういうことを生徒自身が考える時期だと思いますので、生徒を見守っているところです。現在は生徒がきちんと守ってくれていますので、嬉しく思っています。
学校にいる時に生活習慣やけじめなどがきちんと出来ていれば、社会に出てからも何の問題もありません。時間を守るというのは基本中の基本です。また身だしなみがルーズになり、それが長く続く状態はどこかに課題があります。ルールをきちんと守っていくことが大学に行っても、社会に出てからも必ず役に立つはずです。それを七高にいる時に是非とも身に付けて欲しいのです。保護者の皆様もそれを望んでおられると思います。
小林 そうですね、運動会など特定の時期だけやるのは構わないよ、でもそれを機にその後もズルズルは駄目だよというのは、保護者として思います。子供達はどこまでがけじめか判らないところがまだありますので、それらは大人がしっかりして見ていかないといけないと思います。
-- それと本年度、七高のトピックスとして忘れてはいけないのは、保護者会による教室へのエアコン導入です。すでに工事は全て終了し、たまたま明日が業者からの引渡し日とのことですが。
吉田 はい、明日6月9日に保護者会会長でもある小林PTA会長にもお越し頂いて、稼動開始のボタンを押して頂くというセレモニーを行います。職員室に設置した配電盤で一括集中管理をします。そのボタンを押すとエアコンが使用できるようになります。
全てのホームルーム教室24(8クラス×3学年)と各特別教室・会議室・図書室など合計33室に設置しました。これらは横尾前会長、小林現会長のご英断がまずあり、5月13日の保護者会でもご賛同が頂けたことで実現出来ました。本当に感謝しています。生徒のためのより良い学習環境づくりだけでなく、教員も授業が進めやすくなり、生徒の学習状況をより把握出来るようになるといった効果が期待できます。
小林 会議室だけは毎年35万円かけてレンタルで、自習室として使う夏休み中には設置していましたが、ちょっともったいないなと思っていました。
-- 来年度からは一応県の方からエアコンの費用は出る予定になっていますが、こういった社会情勢ですのでまだ流動的な要素もあります。仮に県の方針が変更になったとしても、七高では夏季の期間も快適な学習環境は保障されているということを、現在受験校選びをされている中学3年生にも大いにPRして頂きたいです。
吉田 そうですね。学習環境はとても大事なことです。エアコンの導入は本校のトピックスです。始業前には図書室を開放して、朝の自習にも対応出来るようにしていきます。
姉妹校交流としての韓国訪問を終えて
--5月30日から6月3日には姉妹校交流としての韓国・水原外国語学校訪問が行われ1年生13人、2年生5人の計18名が吉田校長を含む先生方2名の引率にて参加しました。特に1年生の参加希望者が多く、選抜試験を実施したとおききしましたが。
吉田 勿論可能ならば希望者全員を連れて行きたかったのですが、向こうでのホームステイ受け入れの定員がすでに18名と決まっていました。残念ながら急遽ホームステイ先を増やすことも出来ませんでしたので、1年生には参加の目的に関して作文と面接を実施し、目的意識のよりしっかりした生徒に参加してもらいました。倍率は約2倍でした。
-- 今回の姉妹校交流で韓国訪問された時、現地で生徒達は言葉はどうしていたのですか?
吉田 韓国語が出来る七高の先生方から事前指導を受けて、学校紹介、そして自己紹介も18人全員が韓国語で行いました。最後のお別れパーティーでも1年生の生徒が代表してお礼の言葉を韓国語で述べました。
小林 たとえカタコトでも現地の言葉で喋ると、大変喜ばれるでしょうね。頼もしいです。
吉田 交流した向こうの生徒たちは外国語学校の日本語学科の生徒ですから、勿論日本語は上手です。他に中国語・フランス語・ロシア語・英語の計5ヶ国語の専門クラスがあります。
-- 参加した生徒達にとっては、大変貴重な4泊5日だったことでしょう。今回参加できなかった1年生はまた次の機会を楽しみに待っていると思います。ただこれなどは生徒の参加意欲もそうですが、経済的な面も含めたご家庭のご理解・ご協力が不可欠ですから、そういった点からすると本年度新入生及びその保護者の方々の七高への期待感のあらわれとも言えます。
吉田 やはり新入生の保護者の皆様へのアンケートでも「学習指導」「進路」と並んで「国際理解教育」への期待が高かったのです。「国際理解教育」を積極的に進めている高校はそれ程多くありませんので、本校へ期待が寄せられているのだと思います。
-- 特に公立高校ではそうですね。
吉田 海外への修学旅行や今回の姉妹校交流などは七高の特徴の一つです。姉妹校交流については「何故、韓国の学校なのですか?」といった質問も保護者から寄せられています。「英語圏の学校とも行ってください」という要望も多くあるので、現在県と協議しながら英語圏の学校とも姉妹校交流ができるように準備しています。
-- 近々、第2・第3の姉妹校締結のニュースが届くことを期待しております。
吉田 日ごろから保護者の皆様の国際理解教育へのニーズの高さを感じています。私も以前民間企業で海外勤務の経験がありますので、保護者の皆様の期待には出来るだけ応えていきたいと考えています。
-- 10月25日からの2年生の修学旅行は昨年度に引き続き韓国ですから、さらに姉妹校同士の絆を深めてきて頂きたいものです。
3・11とその後の対応
-- ところでこの鼎談の前半を同窓会ホームページに掲載したのは3月11日の午前だったのですが、まさにその日の午後、東日本大震災が発生しました。4日後には合格者説明会も予定されていましたが、それらへの対応や災害発生時のマニュアルの見直しなど、色々と大変だったかと推察いたします。これらの点についていくらかお話頂ければと思いますが。
吉田 ちょうど3月11日の午後は学校の応接室で(前年度の)第2回学校評議員会議を行っていました。地震の発生と共に、校内はすぐに停電で真っ暗となりました。
当日は午前授業でしたので部活動をしていた生徒たちが校内にいました。午後6時過ぎの時点で、避難した252人の生徒は体育館内で待機してもらいました。時間の経過と共に体育館内では寒くなってきたため、暖をとるために男子生徒たちが毛布を取りに来ま した。「女子生徒を優先に配ってください」と提案したところ、その通りにしてくれました。
-- すでに3年生は卒業していましたから、1,2年生合わせて当時の在校生約550人のうち約半数の生徒がまだいたわけですね。
吉田 その後、教員が最寄り駅まで生徒を引率したり、保護者の皆様に学校まで迎えに来てもらい、大きな混乱や事故もなくその日のうちに生徒全員が無事に帰宅できたことは本当に幸いでした。
特に、江ノ電に乗り合わせていた59名の方もこちらの体育館に受け入れました。 生徒や職員の対応に感謝するお礼の手紙が届き、神奈川新聞でも紹介されました。職員も生徒も思いやりを持って対応してくれたことは、他者に思いやりをもって接する校風の表れそのものだと思います。私が日頃から言っている「レイゾン・デートル」「ノーブレ ス・オブリージュ」の精神が、ああいった緊急事態の時に発揮できたことはとても良かったと思っています。
-- 我が家もそうでしたが、鎌倉市内は夜9時頃まで停電していました。
吉田 夜10時頃校長室に戻って来て、やっとテレビが見れる状態になりました。あの津波のすざましい映像を目の当りに見ました。七高では災害発生時のマニュアルの見直しを早急に行わないと、同規模の地震が起こった場合、津波で校舎全体が間違いなく高波にさらわれてしまう。新入生が入学したらすぐにでも避難訓練を行う必要があると考えました。11日には管理職全員が校内に泊まりましたから、その日の夜にマニュアルの見直しをお願いしました。
-- 4日後の合格者説明会では、来校者のためにバスをチャーターされました。これも民間企業で長年勤められた吉田校長ならではの「おもてなしの心=ホスピタリティ」といいますか、まさに合格が決まっている新入生及びその保護者に対して安心してもらおうというお心遣いかと感じましたが。
吉田 はい、江ノ電が計画停電の影響で8日間運休していましたので、その間在校生の授業は全く出来ませんでした。ただ合格者説明会は開かないわけにいきませんでしたので、仮に車で来校されても校内に停める場所はない。そこでJRは動いていることから、藤沢まで出られる方法を考え、管理職が江ノ電と交渉して実現できました。1台の定員が約50人で6台臨時バスをチャーターしました。保護者の皆様からは大変喜ばれました。
-- いざ実行されてしまうと簡単なことのようにも思えますが、中々そういった発想は出てこないと思います。
小林 江ノ電が止まったら学校には行けないの?ということになってしまいますから。
吉田 江ノ電がようやく運転再開となっても、最初は2両編成での運転でした。それも登校時・下校時には出来るだけ4両でお願いしたいと企業側に申し入れをして、鎌倉高校と七高とで時差登校・時差下校をしたりと、随分工夫をしました。江ノ電さんからは社長さんに来校いただいたりもして、特段の便宜を図っていただきました。
--休校になった間の授業分はどうされたのですか?
吉田 課題を3月15日の学校のホームページに掲載して、レポートなどで対応してもらいました。 また授業日数の確保のため本年度の始業式は例年の4月5日から4日に前倒ししました。
-- 震災及びその後の原発事故の影響としては、留学生の方が一旦全て帰国されてしまったというのがあります。これは先程の国際理解教育の推進という観点からは残念なことでした。
吉田 現在は韓国からの女子生徒とタイからの男子生徒の2人が留学生として在籍しています。
-- これはまた元の状態に戻るのには時間がかかりそうですね。
小林 原発事故が収束しないことには・・・。
吉田 大使館の職員も含め、日本にいる外国人は震災後1週間以内に帰国した方もいました。出身国のルールで留学生が帰国せざる得ない状況についてはやむを得ないことだとも感じました。
-- 確かに我々日本人であれば、例えば福島と七高のある鎌倉がどれほどの距離が離れていて、とりあえず放射能汚染はないという判断はつきます。しかし外国の方にすれば世界地図でその中に小さく描かれた日本を見るわけですから、その距離がわからず不安になるのもやむを得ません。
また七高生徒会本部では今回の震災支援活動として、「ワンコイン募金」を始めましたが。
吉田 先日の球技大会などで集まった32,500円を宮城県の七ヶ浜町に送り、町長さんからお礼の手紙が届きました。ペットボトル1本飲むのを我慢して募金しようという生徒の温かい気持ちの表れであり、また教職員も募金に協力してくれました。今後も運動会、七高祭、合唱祭の3回ほど募金を集め、そのたびに七ヶ浜町に送りたいと思っています。
-- 七高では毎年夏休みに希望者による英語合宿を福島県内のブリティッシュヒルズという施設で行っていますが、本年度はちょっと無理のようですね。ただ本年度の第35回全国高等学校総合文化祭全国大会は福島県が開催地で、七高からも3年生の女子1名が囲碁の部に出場されるということで、色々な意味で思い出に残る大会になるかと思います。
またこのたびの震災ではボランティア活動といったものの重要性や関心が、日本社会全体において更に高まっていますが、七高生の間ではいかがですか?
吉田 これまでのインターアクト同好会は本年度からボランティア部となり、JRC (青少年赤十字同好会)と一緒に活動しています。ボランティア活動にも積極的に取組んでいきたいと考えています。
-- 生徒会本部によるワンコイン募金も含め、こうしたボランティア活動なども今後、七高の特徴の一つとしてその活動が大きくなることを期待しております。
今後の学校運営について
-- 学校を側面から支える団体としてのPTA及び我々同窓会の活動につき今後のご要望・ご期待などありましたら、忌憚のないところをお聞かせ頂ければと思いますが。
吉田 学校を取り巻くステイクホルダー=関係者、は勿論生徒が中心ですが、保護者の皆様・卒業生の方もおられるわけで、それらの方々が生徒のために力を合わせて頂くことが大切だと思います。
特に経済的な面では、同窓会からは毎年10万円の図書費の寄贈や在校生対象の給付制の奨学金(全学年で9名に年額3万6千円)などを長年行って頂いていますし、近年は別に年間30万円の備品の寄贈も受けております。PTAからも卒業記念品(35期生からは体育館のブルーシート)などで学校の教育活動にご支援頂いています。
-- 本年度はその一環として、早速ですが同窓会から災害用の備品を寄贈させて頂く予定になっております。
ではまとめとして、吉田校長も着任されて現在2年目が始まったところですが、今後の学校運営において考えておられる方向性などをお聞かせ下さい。
吉田 昨年度打ち出した「教育環境の整備」は、教育課程ですとか学期制、施設面の充実などが挙げられます。次に「生徒の意識改革」があります。自分の人生を大切にしてもらうという意味から、七高での生活ぶりを見直してもらう。この2つを柱としました。ある程度大きな枠組みを決め、その上で具体的な活動目標に向かって新年度がスタートしていますので、じっくり状況を見定めながら、目標の進捗状況を確認したいと考えています。
また、保護者の皆様の学校に対するニーズも時代を反映して色々と変わってきていますから、そういうことを加味しながら良い学校づくり、つくるというのは「作る」 ではなく「創る」ですが、学校経営というものをしていきたいと思います。
-- あと最後に是非、小林会長からPTA活動におけるご抱負を、生徒達に対する思いというものも含めてお願いします。
小林 七高に対して願うことは学力向上もそうですが、素直な生徒が多いのでその素直さが変わらずいい方向に向かっていけるようにして欲しいです。PTAはやはり縁の下の力持ちとして、私自身前に出ることは好きではないので、会員の皆さんのお子さん達を助けていけたらと思っています。あとはやはり健康面ですね。様々な活動を通じて保護者として生徒達を支えていきたいです。
--長時間、貴重なお話をありがとうございました。
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