岩田先生より退任の挨拶


県立七里ガ浜高校30周年に思う

七里ガ浜高校開校から30周年と聞き、月日の経つ速さを改めて感じます。そして、ずいぶん長く係わりを持ったことに感慨を覚えています。

昭和51年2月1日、兼務辞令を受けて、第1回生の入学する4月までの2ヶ月間を茅ヶ崎北陵高校と七里ガ浜高校で仕事をすることになりました。七里ガ浜高校に出勤しても、もとより生徒はいるはずもなく、それは新入生を迎え入れるための準備期間でした。

それから、1回生の鎌倉高校体育館での入学式、借用した校舎での生活をして、七高の校舎が出来るのをまだかまだかと待った1年間でした。私は保健体育の教諭でしたが、借用した鎌倉高校では1面のバレーボールコートと1面のハンドボールコートが専用利用できるだけでしたので、天候さえよければ走ることばかりで、七高建設予定地までの往復と海岸での授業が中心でした。

ですから、1年後、南棟校舎への引越し作業は1回生の諸君と共に最大のよろこびでした。それから平成18年3月31日まで、教員として22年間勤務し、定年後はバスケットボール部の嘱託として合計30年間、七高生と共に過ごすことが出来ました。とても幸せな生活でした。

思い出深いことは沢山ありますが、グランドの防塵対策のためクローバーの育成やら土壌改良、散水ガンの設置等々の試行錯誤を繰返したことが思い出されます。これといった良案もなく、それでも強風に耐えられる植樹をして緑化と防塵に備えることを念頭に、沢山の苗木を植えていただきました。しかし、当初は強風と塩害、そして海底が隆起して出来た塩分を含んだ土壌なので植樹する環境としては劣悪でした。その環境改善のきっかけになりましたのは、PTAの環境委員の方と相談し、県立大船植物園の(故)脇坂先生に植樹のご指導をお願いしたことです。

脇坂先生は快くお引き受け下さり、土壌改良から植樹計画・海風に適した樹木の選定までの計画図を作成されました。植生を考えて潮風に強い木を群生して植える、同じ苗木でも内陸で育ったものよりも、海浜に近い場所で育った苗を利用するなどのご指導で、ハマヒサカキ、シャリンバイ、トベラ、レーランドヒノキ、ホルトの木、黒松、大島桜、ゆりの木(チューリップの木)などを植樹しました。

ゆりの木は校舎とグランドの間に植え、3階から花の様子がわかるようにとの配慮からでした。桜はわざわざ大島桜を選び、120本のうち10本から12本が生育すれば良しと言われ、中庭へ植えました。今も10本から11本は育っていると思います。桜の花の下で新入生を迎えようという考えでした。黒松は湘南海岸の防風、防砂用に育苗されたものを無料でいただき、群生させ、防風用に育てました。

このように教育環境に必要な緑の確保だけをみても、その後に訪れるであろう緑豊かな理想郷を夢みて、多くの人の知恵と大切に育てて欲しいという願いが込められていました。しかし現在、場所によっては工夫が不足して風害等に耐えられず枯死し、ある所では根元から伐採され無残な姿をさらしています。時代が過ぎ、人が変わるとこうも変わるものなのか、改めて引継ぎ育てることの難しさを感じています。

ところで、退職して10年ほど私はバスケットボール部の嘱託として、週に4・5日(土、日を含んで)体育館へ足を運びました。退職以前と比べて生徒諸君は変わっただろうかと聞かれました。バスケットボール部の部員に関しては、以前と変らず礼儀正しく、よく活動してくれています。体育館でよくみかける2~3の他の部員も礼儀正しくあいさつが出来ています、今後もよく練習に打ち込んで欲しいと思います。ただ、気になるのは「オハヨウ」「サヨウナラ」を笑顔でいえる生徒達が少くなったことです。この点はこれから気をつけて欲しいところです。

創立から30年、お世話になった学校に別れを告げました。しかし、私の人生で最も貴重で大切な職場であったし、誇り高き学校でもありました。3年間で卒業する生徒諸君も、この3年間を生涯忘れることはないでしょう。

このところ、教員は一校での最長在勤期間が15年から12年となり、やがては10年ということもありうるでしょう。管理職にいたっては2年か3年で交代です。校風を創造する、一貫した母校愛を育むことなどが、現状のルールの中で本当に出来るのだろうかと危惧しています。しかし、学校がより良く発展する力は、賢明なる在校生諸君の意識の中にあると考えます。また、良き伝統を語り、次代につなげるには、同窓生が蔭に陽にあらゆる面で学校に係わりをもち、母校の発展に力を貸すことにあると考えます。

学校を発展させていくには、母校を愛し、七里ガ浜高校に学ぶことを幸せに思い、胸を張って七高の卒業生であることを誇りに出来る学校にすることです。私は、発展を祈ることだけでなく、手助けできることがあるならば、ご恩返しのつもりでこれからも協力を惜しまないつもりでいます。

最後になりましたが、七里ガ浜高校及び同窓会の益々のご発展をお祈りいたします。また、同窓会より30年の節目にお祝いをいただきました。この場をお借りいたしまして、心よりお礼申し上げます。

平成19年1月  
岩田保生